『福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会』
公開 2026/04/08 05:49
最終更新 2026/04/08 06:44
先日たまたまこの本の著者が解説している動画を見かけて、遅ればせながらこの話題の本を読んでみた。

福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会
加藤喜之 著(中公新書)


進化論を否定し、聖書に書いてあることが事実だと主張する「原理主義者」という人たちがアメリカには少なからず存在する、とは認識していた。
福音派(evangelical)も同じように聖書を重んずるが、世俗とは距離をおいて独自の世界をつくる原理主義とはちがい、社会に参加していくスタイルだ。

日本人の我々には想像もつかないくらいキリスト教はアメリカ社会に密接に関わっている。現在の大統領であるトランプ氏の支持者にも福音派はとても多い。
福音派の考え方だと「ユダヤ人の国ができる→最終戦争ハルマゲドンが起こる→キリストの再臨」と聖書にあるので、いまはその時期なんじゃないか?ってことになる。
ディスペンセーション主義という、神の計画どおりに物事は進んでるよ的な考え方だ。

聖書を字義どおりに解釈すると「イスラエルを大事にせよ」ってことになるので、福音派の人たちは神の計画のためにはイスラエルに味方する、敵対するものは悪魔!と考える。

旧約聖書の神はもともとイスラエルの民を祝福する存在なので、聖書にそう書いてあるのは当然だよね。
でもその後、西洋の人たちは「ひとつの民族ではなく人類みんなを救う!その窓口は教会だよ」って神に作り変えて世界宗教として発展した。

で、近代。
聖書にあるイスラエルの民と同一のものを指すか私はわからないけど、その末裔という人たちがイスラエルという国家をつくった。
敬虔なクリスチャンたちは「これって聖書で見たやつ!」と熱くなるのはまぁわかりますね。

トランプ大統領の支持者にはこの考え方の人が多いので、よその国から見たら「どうしてそんなにもイスラエルの味方をするの?」と思われる彼の行動はそのへんが絡んでるというわけ。
トランプ自身がどれだけ預言の成就を信じているかはわからないけど、支持者の望みを無視できないのは確かでしょう。

この福音派がどのように生まれ、ラジオや映画など最新のメディアをつかってアメリカ中に広まって行ったかを概観するのがこの本です。
カーターやブッシュ、クリントンにオバマなど馴染みのある大統領も登場し、彼らの台頭にはアメリカの宗教事情が関係していることがわかる。

ひとつ重要なポイントとして福音派はアメリカ南部に多く白人男性がメイン層で、保守的な考え方をする。
昔ながらの家父長制と男女観を重んじ、熱心に教会にかようのが「古き良きアメリカ」だと考えているわけですね。
これは中絶や同性婚、男女平等の権利を認め、キリスト教以外の宗教を信じる自由を認める「新しいアメリカ」と正反対の考え方で、正面衝突する。
このアメリカでの文化的な分断は当然外国にも波及し、我が国もめっちゃ影響受けてると思います。
日本のネットを騒がせてる文化的対立も、なんのことはない、ここらへんが元ネタじゃん…と白けてしまうことも多々ある。

白けていても現状は変わらない。
わが国をも巻き込む大きな文化的な分断の背景に、アメリカの福音派という人たちは少なからず影響している事実を知っておいても損はないと思う。

私が無知な分野であることも大きいが、とてもためになった。

おしまい。
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