「右派市民」と日本政治(読書感想文)
公開 2026/02/25 17:51
最終更新 2026/02/26 09:24
「右派市民」と日本政治
愛国・排外・反リベラルの論理
松谷満(朝日新書)



最初に概要を書いとこう。
「みんなが思ってるほどステレオタイプの極端な右派市民は存在しない。けっこうグラデーションがあり、いくつかの要素を全て満たした人はそれほど多くない。」

本書でユニークなのは非公募型の郵送調査で得たデータを使っているところ。
これはネット調査よりも回答の偏りをなくす効果が期待できるとのこと。
11508人のモニターに「市民の政治参加に関するアンケート」をとった調査を元にしている。

本書における右派の定義は国や伝統を重視し、過去の日本やその規範に強い愛着をもつ人たちと定義される。国や伝統を軽んじるように見える人たちの反発も特徴。

で、この一部を満たしてる人を本書では右派市民と呼び、
①愛国主義者
②伝統主義者
③排外主義者
⓸反左主義者
とざっくり4タイプに分ける。

「右派市民はこれらすべてを兼ね備えた人が多いんじゃないか」って気がするけど、調査の結果はかなりまちまち。
すべてに当てはまる極端な人は0.2%とかなりレア。
つまりこだわりが強いポイント以外はそこまで頑なではない人が多数派だと。

よくネット見てると、右派的なスタンスの人はステレオタイプの発言をしてるように感じてしまう。
しかしそれはそのこだわりポイント内でのことで、別の右派ポイントも同じ意見かと言うとバラバラだったりする。

この研究が面白いのは正反対の左派市民もちゃんと抽出し、比較しているところ。
同じように左派もグラデーションがあり、すべて兼ね備えたゴリゴリの左派というのはかなりレアらしい。

我々はどうしてもある属性の人、たとえば本書で扱う右派や左派の「極端な人」をステレオタイプでとらえてしまいがちだ。
しかしこうしてデータを見てみるとそんな簡単なものではない。
あるポイントだけに注目すれば「みんな同じように見える」というだけなのだ。

本の結びで「考え方はそれぞれだから相手を尊重しようね〜客観性を大事にね〜」という結論はわかりきったことだとする。
そのうえで「あなたがどうすればいいか」考えて欲しい、と言う。
著者の松谷氏は本書の基準に照らせばガチの左派市民だそうだ。
右派市民の立場とは異なるが、彼らとの対話を諦めない根拠に「自分はキリスト者だから」という理由を持ってくる。
これがとてもユニークでおもしろかった。
ほねロック
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