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公開 2025/12/12 07:11
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芸人・さらば森田の「場面で生きる」哲学から学ぶ、計画しない生き方のススメ
「人生計画を立てなければ」「高い目標を設定して、脇目もふらずに進むべきだ」。現代社会では、まるでそれが唯一の正解であるかのように、計画通りに生きることへのプレッシャーが常に存在します。しかし、そんな風潮に真っ向から逆らい、独自の哲学で成功を収めた人物がいます。お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんです。
高校留年、消費者金融を巡る「サーキット」、そして相方の大スキャンダル。彼のキャリアは、一般的な成功ルートとはかけ離れた「遠回り」に満ちています。しかし、その一つ一つの出来事が、今の彼を形作っているのもまた事実です。この記事では、そんな森田さんのキャリアから、計画に縛られず、もっと柔軟に生きるための5つの驚くべき教訓を紐解いていきます。
「場面で生きる」こそが唯一の戦略
森田さんの哲学の核心は、「全部場面やねん」という一言に集約されます。「ゴールデン番組のMCになりたい」「お笑い界の天下を取りたい」といった長期的な目標を設定することを、彼は明確に否定します。
全部場面でやってきてんねん...変に目標持たへんっていう。
これはなぜ強力なマインドセットなのでしょうか。それは、壮大な目標が時として人をがんじがらめにし、身動きを取れなくさせることがあるからです。彼はこれを「字絡め(じがらめ)」になると表現します。これはおそらく「自縄自縛(じじょうじばく)」を彼流に言い換えた、学術的でない、肌感覚から生まれた言葉でしょう。この独特な言葉選び自体が、彼の直感的で自由な思考スタイルを物語っています。
「場面で生きる」とは、目の前の状況や機会に全力で、そして誠実に対応するということ。計画という呪縛から自らを解放し、その時々の流れに身を任せることで、予期せぬチャンスを掴み、自分でも想像しなかった場所へたどり着くことができるのです。
最高のチャンスは、ただの偶然から生まれる
森田さんのキャリアの大きな柱の一つである「モルック」。彼が日本におけるモルックの顔となった経緯は、彼の哲学を象徴しています。それは、緻密な計算から生まれたものではなく、全くの偶然の連鎖から始まりました。
1. きっかけは、サンドウィッチマンの富澤たけしさんが番組で「趣味にしろよ」と軽く勧めたこと。
2. 森田さんは、次に富澤さんに会った時に話のネタにするためだけに、モルックを調べた。
3. すると、世界大会の日本代表になるための条件が、なんと「フランスまでの旅費がある人」だけだと知る。
この一連の流れは、計画的な行動とは無縁です。しかし、何気ない提案を無視せず、軽い気持ちで一歩踏み出したからこそ、彼は「モルック日本代表」という唯一無二の武器を手に入れました。
えそれなんすか?えその世界大会行く条件って何なんすかって聞いたら、フランスまでの旅費がある人です。
キャリアを切り開く大きなチャンスは、壮大な計画書の中ではなく、日常に転がる些細な偶然の中に隠されているのかもしれません。
最大の目標を手放した時、キャリアは開ける
独立後、仕事がほとんどなかった時代の「さらば青春の光」にとって、年に一度の「キングオブコント(KOC)」は、世に出るための唯一と言っていいほどの大きな目標であり、プラットフォームでした。しかし、皮肉なことに、彼らのテレビ出演が増え始めたのは、KOCからの卒業を宣言した後だったと森田さんは語ります。
彼はその現象を「1個捨てたら1個なんか入ってくるなっていう感じ」と振り返ります。長年こだわり続けた「KOCで優勝する」という最大の目標を手放したことで、新たな可能性の扉が開いたのです。
インタビュアーが「賞レースの現役プレイヤー感が強すぎると、タレントとしての幅が狭まるのでは?」と仮説を投げかけると、森田さんも「うんちょっとあるんじゃないですか」と同意します。一つの目標に執着することが、かえって自分の可能性を狭めてしまう。この逆説は、多くの人のキャリアにとって重要な教訓となるでしょう。
どん底のスキャンダルは、新たなスタートラインになる
相方のスキャンダルにより、事務所を去ることになった彼ら。その辞め方は壮絶でした。社長は個人的には「応援してるわ」と送り出してくれたにもかかわらず、その翌日、事務所は公式に極めて厳しい声明を発表します。
彼らの活動を支え続けることが不可能になりました。
仕事なし、事務所なし、業界からは総スカン。まさにゼロからの再出発を余儀なくされました。しかし、この絶望的な状況こそが、彼らの芸人としての本質を剥き出しにしました。
常識的に考えれば、相方の不祥事はキャリアの終わりです。しかし、森田さんの捉え方は全く異なりました。彼は当時を振り返り、こう語っています。「もちろん絶対やったあかんこと」と前置きしつつも、「芸人やなって思ったなんか...ちょっとなんか憧れもあるかなみたいな」。
この一言が、彼の哲学の深淵を物語っています。「場面で生きる」とは、単なる柔軟性ではありません。世間の道徳観すらも乗り越え、スキャンダルさえも「芸人としての物語」として捉える視点なのです。この事件は、彼らを強制的に独立させ、誰にも真似できない現在のアイデンティティを築き上げる、最高の「場面」となったのです。
「一番」を目指すな、「不幸」になるな
動画のインタビュアーである現役東大生YouTuberに対して、森田さんは意外なアドバイスを送ります。それは「HIKAKINになるな」という言葉でした。
彼は、トップクリエイターがしばしば終わりなき苦しいレースに囚われていると指摘します。HIKAKINさんが「この5年、悪夢しか見てない」と語ったエピソードを挙げ、頂点に立つことと引き換えに、そんな思いをするなら意味がない、と断言します。
俺5年間悪夢見るやったら俺やめるよ。絶対に。
それに対し、森田さんが提示するクリエイターとしての哲学は、もっと肩の力が抜けたものです。「家賃払えてるうちはええやん」。活動が楽しくて、生活が成り立つならそれで十分。もし5年間も悪夢を見るようなら、絶対に辞めるべきだ、と。これは、消耗しがちな現代のクリエイティブなキャリアにおいて、より健康的で、持続可能な考え方を示唆しています。
「遠回り」とは、一体何か?
森田さんのキャリアは、成功への道筋は一本ではないことを教えてくれます。厳格な計画がなくとも、目の前の「場面」に真摯に向き合うことで、道は拓けていくのです。
インタビューの最後に「あなたにとって遠回りとは?」と問われた森田さんは、こう答えました。「結果だけ」。つまり、「遠回り」とは、後から振り返って初めてそう見えるものに過ぎない、と。
今、あなたが自分の人生における「遠回り」だと感じているその道も、数年後には、目的地へ続く唯一のルートだったと気づくかもしれません。
「人生計画を立てなければ」「高い目標を設定して、脇目もふらずに進むべきだ」。現代社会では、まるでそれが唯一の正解であるかのように、計画通りに生きることへのプレッシャーが常に存在します。しかし、そんな風潮に真っ向から逆らい、独自の哲学で成功を収めた人物がいます。お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんです。
高校留年、消費者金融を巡る「サーキット」、そして相方の大スキャンダル。彼のキャリアは、一般的な成功ルートとはかけ離れた「遠回り」に満ちています。しかし、その一つ一つの出来事が、今の彼を形作っているのもまた事実です。この記事では、そんな森田さんのキャリアから、計画に縛られず、もっと柔軟に生きるための5つの驚くべき教訓を紐解いていきます。
「場面で生きる」こそが唯一の戦略
森田さんの哲学の核心は、「全部場面やねん」という一言に集約されます。「ゴールデン番組のMCになりたい」「お笑い界の天下を取りたい」といった長期的な目標を設定することを、彼は明確に否定します。
全部場面でやってきてんねん...変に目標持たへんっていう。
これはなぜ強力なマインドセットなのでしょうか。それは、壮大な目標が時として人をがんじがらめにし、身動きを取れなくさせることがあるからです。彼はこれを「字絡め(じがらめ)」になると表現します。これはおそらく「自縄自縛(じじょうじばく)」を彼流に言い換えた、学術的でない、肌感覚から生まれた言葉でしょう。この独特な言葉選び自体が、彼の直感的で自由な思考スタイルを物語っています。
「場面で生きる」とは、目の前の状況や機会に全力で、そして誠実に対応するということ。計画という呪縛から自らを解放し、その時々の流れに身を任せることで、予期せぬチャンスを掴み、自分でも想像しなかった場所へたどり着くことができるのです。
最高のチャンスは、ただの偶然から生まれる
森田さんのキャリアの大きな柱の一つである「モルック」。彼が日本におけるモルックの顔となった経緯は、彼の哲学を象徴しています。それは、緻密な計算から生まれたものではなく、全くの偶然の連鎖から始まりました。
1. きっかけは、サンドウィッチマンの富澤たけしさんが番組で「趣味にしろよ」と軽く勧めたこと。
2. 森田さんは、次に富澤さんに会った時に話のネタにするためだけに、モルックを調べた。
3. すると、世界大会の日本代表になるための条件が、なんと「フランスまでの旅費がある人」だけだと知る。
この一連の流れは、計画的な行動とは無縁です。しかし、何気ない提案を無視せず、軽い気持ちで一歩踏み出したからこそ、彼は「モルック日本代表」という唯一無二の武器を手に入れました。
えそれなんすか?えその世界大会行く条件って何なんすかって聞いたら、フランスまでの旅費がある人です。
キャリアを切り開く大きなチャンスは、壮大な計画書の中ではなく、日常に転がる些細な偶然の中に隠されているのかもしれません。
最大の目標を手放した時、キャリアは開ける
独立後、仕事がほとんどなかった時代の「さらば青春の光」にとって、年に一度の「キングオブコント(KOC)」は、世に出るための唯一と言っていいほどの大きな目標であり、プラットフォームでした。しかし、皮肉なことに、彼らのテレビ出演が増え始めたのは、KOCからの卒業を宣言した後だったと森田さんは語ります。
彼はその現象を「1個捨てたら1個なんか入ってくるなっていう感じ」と振り返ります。長年こだわり続けた「KOCで優勝する」という最大の目標を手放したことで、新たな可能性の扉が開いたのです。
インタビュアーが「賞レースの現役プレイヤー感が強すぎると、タレントとしての幅が狭まるのでは?」と仮説を投げかけると、森田さんも「うんちょっとあるんじゃないですか」と同意します。一つの目標に執着することが、かえって自分の可能性を狭めてしまう。この逆説は、多くの人のキャリアにとって重要な教訓となるでしょう。
どん底のスキャンダルは、新たなスタートラインになる
相方のスキャンダルにより、事務所を去ることになった彼ら。その辞め方は壮絶でした。社長は個人的には「応援してるわ」と送り出してくれたにもかかわらず、その翌日、事務所は公式に極めて厳しい声明を発表します。
彼らの活動を支え続けることが不可能になりました。
仕事なし、事務所なし、業界からは総スカン。まさにゼロからの再出発を余儀なくされました。しかし、この絶望的な状況こそが、彼らの芸人としての本質を剥き出しにしました。
常識的に考えれば、相方の不祥事はキャリアの終わりです。しかし、森田さんの捉え方は全く異なりました。彼は当時を振り返り、こう語っています。「もちろん絶対やったあかんこと」と前置きしつつも、「芸人やなって思ったなんか...ちょっとなんか憧れもあるかなみたいな」。
この一言が、彼の哲学の深淵を物語っています。「場面で生きる」とは、単なる柔軟性ではありません。世間の道徳観すらも乗り越え、スキャンダルさえも「芸人としての物語」として捉える視点なのです。この事件は、彼らを強制的に独立させ、誰にも真似できない現在のアイデンティティを築き上げる、最高の「場面」となったのです。
「一番」を目指すな、「不幸」になるな
動画のインタビュアーである現役東大生YouTuberに対して、森田さんは意外なアドバイスを送ります。それは「HIKAKINになるな」という言葉でした。
彼は、トップクリエイターがしばしば終わりなき苦しいレースに囚われていると指摘します。HIKAKINさんが「この5年、悪夢しか見てない」と語ったエピソードを挙げ、頂点に立つことと引き換えに、そんな思いをするなら意味がない、と断言します。
俺5年間悪夢見るやったら俺やめるよ。絶対に。
それに対し、森田さんが提示するクリエイターとしての哲学は、もっと肩の力が抜けたものです。「家賃払えてるうちはええやん」。活動が楽しくて、生活が成り立つならそれで十分。もし5年間も悪夢を見るようなら、絶対に辞めるべきだ、と。これは、消耗しがちな現代のクリエイティブなキャリアにおいて、より健康的で、持続可能な考え方を示唆しています。
「遠回り」とは、一体何か?
森田さんのキャリアは、成功への道筋は一本ではないことを教えてくれます。厳格な計画がなくとも、目の前の「場面」に真摯に向き合うことで、道は拓けていくのです。
インタビューの最後に「あなたにとって遠回りとは?」と問われた森田さんは、こう答えました。「結果だけ」。つまり、「遠回り」とは、後から振り返って初めてそう見えるものに過ぎない、と。
今、あなたが自分の人生における「遠回り」だと感じているその道も、数年後には、目的地へ続く唯一のルートだったと気づくかもしれません。
