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公開 2025/12/12 07:00
最終更新 -
AIに代替されるのは「スマホばかり見る人」。これからの時代に価値を生む5つの人間的スキル

「AIに仕事が奪われる」。巨大コンサルティングファームのパートナーが「入社3年目までのアソシエイトの仕事は完全に消えた」と語り、デミス・ハサビスのAIがアインシュタインの相対性理論を独力で再発見する時代。私たちの最後の砦と思われた「思考」や「創造性」の領域まで、その波は確実に押し寄せています。

人間は一体、何をすればいいのか?

この記事では、思想家の山口周氏と経営コンサルタントの波頭亮氏による刺激的な対談を解剖し、AI時代に真の価値を生み出す人間的な能力の本質に迫ります。彼らの対話から浮かび上がってきたのは、AIと競うのではなく、人間だからこそ持ち得る「5つのスキル」を磨くことの重要性でした。


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1. 「スマホを捨て、世界を見よ」。最強の武器は"五感"である

AI時代における人間の最大の武器は何か。山口周氏は、それはスマートフォンではなく、私たち自身の「五感」だと断言します。

多くの人が、現実の世の中を見ずにスマホの画面を見ています。しかし、それは二次情報の世界に閉じこもることを意味します。AIが得意なのは、まさにこのテキスト化された二次情報の収集・分析です。

対照的に、人間は五感で一次情報に触れ、世界を直接感じることができます。その感性から「これっておかしいんじゃないの?」と、AIにはできない問い、すなわち「アジェンダ」を設定する能力が生まれるのです。山口氏はこのように指摘します。

五感があるってのが人間にとっての最大の武器の一つだっていう……今多くの人たちは世の中見ずにスマホ見てるんですよ……ずっとスマホ見てるってことは、二次情報の世界の中にずっと生きてるってことなんですよね。

この違いを象徴するのが、山口氏が挙げた「高速道路上の牛を認識できずに突っ込んだテスラの車」の事故です。AIにとって、カメラは過去の膨大な画像データと照合するためのセンサーに過ぎません。「高速道路に牛がいる」というデータは統計的な外れ値(アウライヤー)であり、「存在しないもの」として処理されてしまいました。AIは、この異常事態に対して「これは何だ?」というアジェンダを設定できなかったのです。

人間であればどうでしょう。「何かあるぞ」と、統計データにはない未知の存在を認識し、回避行動をとるはずです。この、一次情報から世界の「揺らぎ」や「違和感」を直接感じ取る能力こそ、AIにはない人間の強みなのです。

これからの時代は、五感の感度が鋭い人が大きなアドバンテージを持ちます。そしてその感性は、美意識を高め、食事や音楽、芸術を味わい、生活そのものを豊かに楽しむ力へと直結していくのです。

2. 人間に残された仕事は「飾ること」。人生は"総合芸術"になる

労働の多くが機械に代替された後、人間には何が残るのでしょうか。山口氏は19世紀の思想家ウィリアム・モリスの言葉を引きます。「人間に永遠に残る仕事は『飾ること』だ」。

「飾る」とは、日本の文化で言えば「お花」や「お習字」のような活動です。それは生活のあらゆる場面に存在します。音楽、絵画、家具、建築、美食、庭園…これら全ての表現メディアを使って、私たちは自らの生活空間を飾り付けています。山口氏の言葉を借りれば、「生きることは総合芸術活動だ」ということです。

ここで波頭氏が、この考えを鮮やかに具体化する例を挙げます。茶聖・千利休です。利休は自ら茶碗や掛け軸を作ることはありませんでした。当代一流の職人が作った道具を「プロデュース」し、「茶室」という唯一無二の空間と体験を創造したのです。

この指摘を受け、山口氏は「1億総プロデューサーの時代が来る」と応じます。AIが個別の作品(絵や音楽)を生成するパーツメーカーとなり、人間はそのパーツをどう組み合わせ、自分の世界観を表現するかを担うプロデューサーになる。山口氏はこれを、単なる創造(Creation)ではなく、再創造(Re-creation)だと表現します。AIが作った要素を、自分なりの美意識で再構成し、飾り付ける(リ・クリエーションする)営みにこそ、人間の創造性が込められるのです。

3. AIは「外れ値」に弱い。価値は"平均"の外側にある

AIは、過去の膨大なデータから統計的にもっともらしい「平均的な答え」を導き出すのが得意なシステムです。しかし、真のイノベーションや本質的な洞察は、しばしばその「平均」の外側、すなわち「外れ値(アウライヤー)」に隠されています。

山口氏が語る、広告業界のレジェンド白土謙二氏のエピソードは、このことを鮮やかに示しています。ユニクロのフリースブームの最中、白土氏はその危機を予見しました。

1. 有価証券報告書(テキストデータ): 「売上の8割が男性物」という事実を把握。
2. 店舗の中身(オプティカルデータ): しかし店舗では「買い物客のほとんどが女性」であるという矛盾を発見。
3. 買い物客の表情(インプレッション): さらに彼は「あれは服を買う時の顔じゃない」と直感。

これら質的に全く異なる複数の情報を統合し、白土氏は「これはファッションではなく、夫や子供のための『家庭内の物品調達ビジネス』だ」という本質的なインサイトを導き出しました。タンスが一杯になればブームは必ず終わる、と。このように異質な情報を組み合わせて本質を見抜く力は、まさに人間にしかできない芸当です。

テスラ創業も同様です。2003年当時、市場調査を行えば「電気自動車のニーズはほぼゼロ」という平均的な答えしか返ってこなかったでしょう。しかし、常識から外れたビジョン(外れ値)にこそ未来の正解が眠っていると信じたことで、世界最大の自動車会社が生まれたのです。

4. 「労働は贅沢になる」。これからは"遊び"の達人を目指せ

約100年前、ニューヨーク・タイムズのアンケートに対し、SF作家のデヴィッド・H・ケラーは「未来では、労働が贅沢になる」と予測しました。機械が労働を担い、人間は「想像」と「遊び」に集中する時代が来る、と。私たちは今、その未来の入り口に立っています。

しかし、ただ遊ぶだけで人生が豊かになるわけではない、と山口氏は指摘します。「遊びの時代にこそ教養がないと楽しめない」のです。

ここで言う「教養」とは、歴史や哲学といった堅苦しい学問だけではありません。山口氏が定義する教養とは、何か一つのことを突き詰めた先に見える深い「世界認識」そのものです。伝説のサーファー、ジェリー・ロペスは「サーフィンの本質は待つことだ」と言いました。サーフィンという遊びを極めた末にたどり着いた哲学。釣りでも、芸術でも、音楽でも、あらゆる探求が広義の教養となり得るのです。

皮肉なことに、学校(スクール)の語源はギリシャ語の「スコレー」、すなわち「暇」を意味します。本来、学校とは「暇を楽しく有意義に過ごすための教養を学ぶ場所」でした。しかし現代の教育は、AIに代替されやすい知識の詰め込みに偏りがちです。これからは、自分自身の好奇心を羅針盤に、人生を豊かにする「遊び」の達人を目指すことが求められます。

5. 仕事が残るのは「境界領域」。頭脳と身体を融合させよ

では、具体的にどのような仕事が人間に残るのでしょうか。山口氏はまず、仕事を「定型/非定型」と「認知/物理」の4象限で分類するフレームワークを提示します。AI革命が代替しているのは、ホワイトカラーの「非定型・認知」領域です。

このフレームワークに対し、波頭氏が人間の聖域として極めて重要な洞察を加えます。それが、インテリジェンス(頭脳)とフィジカル(身体)が絶妙に混ざり合った「境界領域」の仕事です。彼が例として挙げるのは、「お花屋さん」や「書道の師匠」。

これらの仕事は、花の知識や書道の理論(インテリジェンス)だけでなく、手先の感覚や身体的な所作(フィジカル)が不可欠です。そこには、単純な効率や品質だけでは測れない、その人ならではの「塩梅(あんばい)」や「個性」が価値を生みます。波頭氏が指摘するように、この「塩梅が発生する余地」にこそ、人間が生き残れる場所があるのです。

AIが苦手とする曖昧さ、個人の美意識、そして人生経験が色濃く反映されるこの領域にこそ、人間の仕事は確かに残っていくでしょう。


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結論:あなたの人生という作品を、どう飾り付けますか?

山口周氏と波頭亮氏の対話が私たちに残した、力強い挑戦。それは、AIの時代に求められるのは、AIと計算能力や情報処理速度で競うことではない、という明確なメッセージです。

五感で世界を直接味わい、 美意識で自らの生活を飾り、 常識や平均値の外側にある「外れ値」にこそ価値を見出し、 教養を深めて「遊び」の質を高め、 頭脳と身体が融合した領域で、自分だけの「塩梅」を生み出すこと。

これらはすべて、どこまでも人間的な営みです。もはや私たちは、スマホの画面に映る二次情報の世界で平均的な正解を探すことから卒業すべきなのかもしれません。

「どんな仕事が残るか」を心配するより、「あなた自身の人生という作品を、どう飾り付けますか?」。

そう問いかける時代が、もう始まっているのです。
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